残虐婦警たちの秘密地下遊技
 
 
 
 
 
 
         (1)
  
  少々木枯らしが吹いているとは言え、穏や
 かな天候に恵まれた休日の市街地。
  多聞に漏れず違法駐車が路上に溢れ、二
 人の婦人警官が気怠そうに取り締まりをして
 いた。
  中沢由美と青木恵美子の二人は、まだ新人
 の婦人警官だった。
 「あ〜あ、毎日毎日取り締まりばっかり。いい
 加減うんざりねー」
 「ほんと、私たちもどこかに遊びに行きたいわ
 よねー」
  どちらともなくため息混じりで雑談をしながら
 淡々と業務を進める二人のすぐ近くの車両に、
 一人の男が近付いてきた。
  男は松田覚。三五歳でもと暴走族、現在も無
 職であちこちからの借金で生活をしており、近
 所の評判も芳しくない。
  二人の制服に気付いた松田は、一瞥をくれる
と素早くドアに鍵を差し込んだ。
  由美が彼に歩み寄りながら声をかけた。
 「ちょっとあなた、ここは駐車禁止ですよ。もう二
時間も放置してますよね」
 「ああ、今どけるよ」
  面倒くさそうに松田が答える。
 「とりあえず、免許証を拝見します」
 手を出した由美に向かって、違反切符を切られ
 ると思った松田は気色ばんだ。
 「なんだと、すぐに移動するって言ってるじゃない
 か」
  動じることなく由美が返した。
 「決まりはきまりです、はい、免許証」
  出された手を、松田は乱暴に払いのけた。「うる
さいな、オレは忙しいんだよ。だいたいあんたらも
 、こんなヒマなことしてないで、もっと大きな事件を
 解決したらどうなんだよ、え?、この税金泥棒めが」
  毒づきながら松田はドアを開け、車に乗り込もうと
 した。
 「待ちなさい」
  制止しようとした由美は、松田に肩を突かれて思わ
 ず転倒してしまった。
  後ろで成り行きを見ていた恵美子が素早く駆け寄り、
 由美を抱き起こし、決心したように松田を睨み付けた。
 「由美、こいつ、やっちゃお」
 「うん」
  二人は速い動作で閉まりかけたドアをこじ開け、松田
 を車外に引きずり出した。       
 「逃がさないわよ。あなたを公務執行妨害と傷害の容疑
 で逮捕します」
  意外な婦警の行動に意表を突かれた松田の手首に、
 あっという間に銀色に鈍く輝く手錠がしっかりとかけられた。
 「おい、これは何の真似だ。外せ」
  戸惑う松田の背中を、恵美子と由美は両側から押さえ
 込み、パトカーに押し込んだ。
 「静かにしなさい。あなたを署に連行します」
  間もなく三人を乗せたパトカーは所轄の警察に着き、松
 田は地下の(特別取調室)と書かれた部屋に連れ入れら
 れた。
 
          (2)
 
  机と椅子しかない部屋の中で、松田は座り心地の悪い
 パイプ椅子に縛り付けられた。
  暴れる彼を由美と恵美子、同僚の相川奈々と倉田優の
 四人は、楽しそうに笑いながらがんじがらめに乱暴に縛り
 付けてしまった。
 「おいこら、馬鹿なことはやめろ。どうして駐車違反なんか
 でこんなことされなきゃならないんだ」
  叫ぶ彼を、優が厳しく制した。
 「静かになさい。大人しくしてないと益々罪が重くなるわよ」
  一括で松田は静かになった。
  ほどなく上司の武田響子が入ってきた。
  机を挟んで男の前に座ると、うっすらと笑みを
 浮かべながら静かにはじめた。
 「松田覚、三五歳、もと暴走族、現在も無職で
サラ金にかなりの借金があるのね・・・ふーん・・・。
 じゃ、調書をとります」
 「おい、一体これは何なんだ。たかが駐車違反くらい
 でオレにこんなことを・・・、一体
 どういうつもりなんだ」
  再び松田が気色ばんだ。
 「え・・・?、駐車違反ですって?、何を言ってるの。
 あなたの容疑は婦人警官に対する強盗と暴行傷害よ。
 ねえ、中沢さん、青木さん?」
  顔を見合わせて頷く由美と恵美子。
 「そうです。私はおかげで全治三週間の重態にされ
 てしまいました」
 「私は無理矢理所持金を全部、強引に奪われました」
  勝手なでっち上げに松田は驚愕した。
 「ば・・・馬鹿な。何を言ってるんだ。オレはちょっと
 肩をこづいただけじゃないか。第一オレは・・・」
 「お黙りなさい、まだ自分の置かれた状況が分かって
 ないようね、仕方ないわね。みんな、容疑者を優しく
説得してあげなさい」
  武田の言葉を合図に机が部屋の隅に退けられ、
椅子に緊縛された男を婦警五人が囲んで立った。
  由美の右手が松田の頬にヒットした。
 立て続けに松田の頬に平手打ちが炸裂した。
  十発二十発と平手打ちを受け、逃れようにも固定
 された身体のままではどうしようもない松田は、
 必死で赦しを願った。
  しかし一人、また一人と平手打ちは続けられ、
 松田の声は悲鳴に変わった。
  五人全員から平手打ちの連打を受けた松田の顔は
 たちまち腫れ上がり、唇の端から出血していた。
  各々の婦警から罵倒され、平手打ちの洗礼を受けた
 松田は、肩で息をしながら弱々しく言った。
 「分かったよ、大人しくするから、もうやめてくれよ、頼む」
  松田の髪を掴み、響子がにっこりと笑いながら言った。
 「分かればいいの。昔の人はいいことを言ってる
 わね、目には目を・・・ってね。うちの署員を重態に
 したんだから、それなりの仕打ちは覚悟しましょう
 ね・・・ふふふ」
  言い終わると、後ろ手に縛った縄を解き、松田を床に蹴り転がした。
 「さあ、みんなで松田容疑者を身体検査しましょう。
 盗んだお金がどこにあるのか、みんなの足で触って
 探すのよ」
  それを合図に、五人が松田の全身を踏みはじめた。
  悲鳴を上げる松田の声に嬌声をあげる五人は
 、さらに踏み・蹴りの足に力を込める。
 床を転げ回って逃れようと必死の松田を、五人は
 執拗に追いつめ、その全身は無惨にも痣だらけに
 なってしまった。
 「本日の取調はここまでよ。どうも容疑者の自白が
 得られないようだから、明日からも取調を続けましょう。
 容疑者を縛り付けておいてください」
  響子は冷たく言い放つと、他の四人の返事を背中で
 聞くように、部屋を出ていった。 
                          
          (3)
 
  松田は壁を睨むように直立姿勢のままで縛り付け
 られていた。
  五人の婦警が笑いながら入ってきた。
  それぞれの手にはなんと、鞭が握られていた。
 「おはよう、気分はいかが。今日も昨日の取調
 の続きよ」
  恵美子の言葉に松田は反応した。
 「何が取調だ、オレは何も盗んでないじゃないか、
 お前ら、どういうつもりだ」
  松田の側に歩み寄った響子が、静かに言いながら
 彼の顔を一瞥した。
 「まだ大分元気があるわね、取調がいがあるわ。さあ、
 みんな。まだ容疑者は身体のどこかに盗んだ現金を
 隠し持ってるみたいですよね。自白していただくように
 説得に努めましょう」
 「そうね、これで刺激を与えたら、暴れて現金がぱらぱら
 ・・・と落ちてくるかもね・・・あはははは」
 「何があはは、だ、お前ら、俺たちの税金でメシ食って
 るんだろうが。なんでこんなこと出来るんだ、憶えてろよ」
  喚く松田の背中に鞭が振り降ろされた。
 「ぐあ〜・・・」
 あまりの強烈な痛みに闘志も萎えてしまう松田に、
 容赦ない鞭の洗礼がはじまった。
  激しく響く音と猛烈な痛みは、自らにおきた理不尽な
 事件を理解しようとする思考力を崩壊させるに充分だった。
  たちまちのうちに激痛にのたうち、悲鳴を上げる以外に
 何も出来なくなった。
  身体をくねらせ鞭の先鞭から逃れようとする松田の身体を、
 容赦なく激痛が襲い続けた。
 「容疑者は黙秘権を行使しています」
 「鋭意説得しましたが、自白を得られませんでした」
 「容疑者の身体的特徴から、証拠品は取得出来ませんでした」
  それぞれが勝手な言葉をかけながら鞭を振り下ろした
 結果、松田の身体はずたずたになってしまった。
  昨日平手打ちと踏みつけによってぼろぼろにされた
 身体は、更なる損傷を受けた。
 「やめてくれ、頼む。許してくれ。オレが悪いんだったら
 謝るから・・・」
  弱々しく懇願する松田を無視して、奈々が一つの
 提案を出してきた。
  全員を寄せ集めての、小さな声でのその提案は
 更に松田を貶めることになる。
「あの・・・だいたい、こういう時って、カツ丼とか差し入れて
 情に訴えるじゃないですか?。容疑者は昨日から何も
 食べてませんから、何か食べ物を与えて、気持ちを
 ほぐしてあげましょうよ」
 「いいわね、それ。採用しましょう」
  残虐な光を込めた目で、響子が呟いた。
 
          (4)
 
  四つん這いに拘束された松田の前に置かれた椅子に
 響子が腰掛けた。
  ヒールを脱ぎ素足になった響子は、コンビニで売って
 いるプリンを手に持った。
 「疲れた身体には甘いモノが一番ね」
  そう言うと容器を逆さにして内容物を床にぶちまけた。
  さらにそれを素足でかき回すように踏み潰した。
「ほら、食べてよ。足についたのから先にきれいにして・・・」
  目の前に差し出されたプリンでぬめった足は卑猥に
 松田の舌の奉仕を待っているように見える。
 おずおずと舌を差し出した松田は、昨日からの空腹に
 耐えかね、響子の素足を貪った。
「そう、きちんときれいに 舐めて。栄養がとれたらまた
 取調よ。ふふ・・・」
  松田への餌付けは続けられた。
  ある者は食べ物を咀嚼したものを松田の口に吐き出し、
 ある者は素足をそのまま松田の口に突っ込み、またある者は
 松田の口に嘔吐物を吐き出し与えた。
  屈辱的な食事に耐えた松田は、それでも気丈に自らの
 無実を訴えた。
 「オレは何もしてない。ただ、駐車違反を無視しようとした
 だけなんだ。だから、それの罰金なら払う・・、だから許して
 くれ。もう解放してくれ・・・」
  訴えを聞いた響子は、にこりと笑った。
 「許してくれ・・・?。それは無理ね。松田容疑者、あなたの
 容疑は、たった今から婦人警官に対する殺人未遂容疑に
 切り替わったのよ。しばらくは取調させていただくわ」
 「な・・・なにを・・・オレはそんな・・・」
  か細い声で訴える松田を、婦警四人はさらに縛り上げ、
 仰向けに固定した。
 
          (5)
 
  仰向けに寝かされ、身体は自由を奪われた松田は、
 それでも絶望の中に希望を見出そうとしていた。
  理不尽な逮捕で収監されたのだから、ここから出たら、
 世間に警察の横暴を訴えてたっぷりと慰謝料を奪おうと
 考えていた。
  そこに由美が近寄ってきた。
 「まだ、自白出来ないのね。・・・仕方無いわね、喉が乾いて
 たら話せないものね。いいものを飲ませてあげましょうね・・・」
  松田の顔を跨いでスカートをたくし上げ、ストッキングjから
 パンツに手をかけてたぐり降ろした由美は、無造作に松田の
 口めがけて放尿しはじめた。
 「ほら、喉が乾いてるんでしょ、全部飲みなさい。
  飲めるはずのないものを口に入れられた松田は激しく
 尿を吹き出した。
 「こんなもの、飲めるか、馬鹿野郎」
  次に同じように放尿した恵美子にも同じように毒づいた。
  毒づかれた恵美子は、口元に薄笑いを浮かべて冷たく
言い放った。
 「飲まないと、脱水症状を起こして死んじゃうよ・・・。
 知らないよ」
  自分の喉の乾きと憤りとの葛藤の末、松田は婦警の
尿を飲むことを決心した。
  五人の尿を代わる代わる飲ませられ、腹は蛙のように
 膨れ上がってしまった。
  何度目かの放尿を終えた響子が、松田に優しく声を
 かけてきた。
 「おなかが膨れ上がってるわね。ちょっとかわいそうね。
 これじゃあ、自白しようにも苦しくって無理よね・・・楽に
 してあげましょうね・・・」
  そう言うと、松田の腹をヒールで激しく踏み付けはじめた。
  あまりのことに耐えられなくなった松田は今までに飲み
 干した尿を噴水のように吐き出してしまった。
 「あら・・・何もそんなに吐けとは言ってないわ・・・、バカね・・・」
  唇の端に笑みを称えた響子が部屋を出ていった後には、
 嗚咽を繰り返す松田の姿だけがあった。
 
          (6)
 
  婦警の尿を飲まされ、もはや人間としても誇りも矜持も
 奪われた松田は、呆然とした状態で寝かされていた。
  自分がなぜここにいるのか、理解する能力も奪われ
 かけていた。
  朦朧として横たわる松田に、奈々が靴音も高らかに
 近寄ってきた。
  松田の顔を跨ぐと、嬉しそうに言った。
 「松田容疑者さん、あなたは頑固な性格で、どうしても
 自白してくれませんね。だから、今回の食事の差し入れは、
 ちょっと変わったものになるわよ・・・」
  しゃがんだ奈々は、程なく見事な黄金を松田の口に注いだ。
 「食べないと死んじゃうよ。食べても、そのうち死ぬけどね
 ・・・あははははは」
  食べられるはずのないとんでもないものを口に受けた松田は
 精神状態がおかしくなりはじめていた。
  奈々の黄金を口に残したままの松田のところに響子が
 近付いてきた。
 「やめろ、いい加減にしろ。オレがここから出たらお前らを
 告訴してやる」
  最後の気力を振り絞ったように松田が叫んだ。
  不適な笑いを浮かべた響子は、全く意に介しない様子だ。
 「あら・・・、そんな手間は必要ないわ。あなたの容疑は
 、すでに殺人に切り替わってるの。当分出られないわ
 ・・・ふふふ」
  松田の驚愕する反応を楽しむように、響子は松田を
 跨いだ。
  もちろん、大量の排泄物をその口に排泄するためで
 あり、生理の始末までもさせるつもりなのだ。
 
          (7)
 
  一体、何日経過したのだろう。
  喉の乾きと飢えのため、松田は婦警の排泄物に
 まみれながら生きてきた。
  一重にそれは、ここを出たら・・・と言うかすかな望み
 から来る精神力だった。
 体力も気力も萎えかけた松田のもとに、由美が
 近寄ってきた。
 「今日はね、報告があるの。あなたの容疑が婦人警官
 殺人による容疑に切り替わったわ。
 それにね、あなたは警察の取調の際に、自殺したことに
 なったわ。安心して、私たちの排泄物にまみれて死んで
 いってちょうだいね。
 ・・・・・あはははははは・・・・」
  たかが駐車違反をごまかそうとした自分が、今は女性の
 排泄物で殺されようとしている、その事実を松田は飲み込んだ。
  もう、どうでもいい。
  精神は破壊され、肉体的にもぼろぼろにされた松田は、
 今や女性の排泄物に対しても条件反射的に口を開けて
 しまう便器に成り下がっていた。
  かすかに残った人間の感情が、松田の頬を一筋伝わった。
 「何よ・・・泣いてるの・・・?。そんなに嬉しいのね。じゃあ、
 きょうもたくさんのうんこを食べさせてあげるわ・・・」
  松田の顔を跨いだ由美は、当然のような表情で松田の
 口めがけて排便をしはじめた。
 松田に出来るのは、それを甘んじて受けることだけだった。
  必死で由美の排泄物を食べ続ける松田の周囲に、五人が
 歩み寄ってきた。
 「頑固な容疑者ね、自白するための食事の差し入れも
 効果がないのね」
  響子があきれたように話しはじめた。
 「飢え死にしたことにしましょうよ」
  優が笑いながら続けた。
 「そうね・・・、じゃあ、記者クラブに連絡してちょうだい。
 (容疑者死亡のままで送検)って・・・」
  事務的な響子の声が響く。
 「わかりました、すぐにそうします」
  松田の絶望の中、五人の笑い声が地下室に響いた。
 「じゃあ、他のみんなは、また獲物を探しに出てちょうだい。
 次はもっと頑丈な獲物が欲しいわね、ふふふ・・・」
  響子がにこりと笑った。
  全員が立ち去った後には、余命が幾ばくもない松田が
 呆然と横たわっていた。
 
          終わり
 

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